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2018.01.19

Steamの使用言語データから考えるいろいろ。

中国圏での販売をまじめに考えないととんでもないことになるなあと思い、とりあえずSteam上に中国語コミュニティを立ち上げ、中国語で呼びかけツイートをPLAYISMの日本語ツイッターでしまして、そのあと何でこんなことしてるか説明しないとただの変な人と思われるかもしれないとSteam言語データこうなってるんだよ、というのを軽くツイートしましたら、軽くバズりました。


バズり過ぎて、何かが変に伝わっていきそうな気がしたので、もう少し詳しくいろいろまとめてみようかと思います。

そもそも何がすごいのか

Steamでは今までずっと中国語(簡体字)ではなく英語が一番だったのですが、今は中国が一番になりました。ここ数年、中国の伸びはすさまじかったのは事実です。
たまたま、2017年7月か8月かの言語データを残してましたので掲載します。半年前は英語が一番でした。
201808_steam_language
で、ですね。ここで、2016年4月現在でSteamアカウント数が1億2500万人いるというデータが公表されているのですが(おそらくこれが最新の公式アナウンス情報……だと思う)、このデータを掛け合わせましょう。計算めんどいので、2017年8月時点で全部で1億人いたとしますが、そうすると2017年8月時点で少なくとも英語使用者は4,000万人いたと。そして、中国語(簡体字)使用者は、1,600万人いたと。そういうことですね。
これが、2017年12月には英語使用者が17%になった。アカウント数が減るということは考えにくいので、少なくとも英語使用者17%とはすなわち4,000万人ですね。で、中国語が63.9%ですから、この3.75倍いるよねと。つまり、2017年8月時点 1,600万人だった中国簡体字ユーザーが、1億5,000万人になったよと。半年で1億3,400万人増えてるんですよ!これが信じられない、ということですね。

なんでこんなことが起きたか

わずか半年で中国において、なぜここまで増えたのかはちょっとわからなかったのですが、ユーザーの皆さまよりTwitter上でいただいたコメントを統合しますと、『PUBG(PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS)』の影響のようです。
『PUBG』プレイヤーではないので、どれくらい中国ユーザーいるかちょっとわかりかねますが、どうもここに集中してるみたい。と、ユーザーさんが仰ってるので、そうなのでしょう。まあ、PUBGがSteamユーザーの構成をごろっと変えるほどの影響力を持つゲームであるのは疑いようがありません。何かしら影響はしているでしょう。
まあ捨てアカがあったり、死んだアカウントがあったり、この数字の中身というか本当の意味がきっとあって、中国多い!スゴイ!とそう単純にうのみにしてはいけません。(半年で1億はまともな数字ではない、でしょ?)あと、中国は人口多いからそりゃそうでしょ、という話もありますが、だったらインドとかブラジルはどうなのよとなるので、そう簡単な話じゃなさそうです。
まあ、何にせよ、統合すると、『PUBG』の影響で、中国のアカウント数(実態はわからない)が1億くらい増えたと。そんなようなことなわけですね。(AutomatonのPUBGニュースをずっと読んでたら、なかなか興味深かった。)

何を見出せばいいのか

ともかく、ツイートしたデータを見て、「ちょっと待って、じゃあ中国語対応したら日本の100倍以上売れるじゃない」と安易に考えるのは、とってもとっても危険です。
そもそも、これはあくまで総アカウントの登録言語の割合なので、売上本数や金額とはまったく違います。お金持ち100人と貧乏人200人だと、お金持ち100人の方が、お金儲け的には価値があるわけですね。
なので、日本に市場価値ない!と思うのもまたちょっと違います。ウチの実感だと、やっぱり日本人はお金持ちですし、特にコアユーザーが集まっている印象です。インディーゲームにとっては、日本というのは(ある程度は)魅力的な市場になってると思います。たぶん。
まあ、データはデータでしかなくて、そこにはホントの意味がいろいろあるよね……というのを考える必要があるよと、まあそんなことです。
とは言え、中国語ユーザーが増えているのは前々から実感としてもあり、中国語圏をいかに攻略するか、ということを僕らは考えないといけないんだろうなあというところにはいます。もちろん、中国は非常に難しい国なので、一筋縄では行かなさそうなのですが、まあ、それはまた別の話と言うことで……。

Steamをどう捉えるべきか

ところで、『中国増えたっつっても、どうせ『PUBG』しかやってなくって、他のゲームになんて興味ないよ』みたいなツイートを拝見したのですが、その視点はとてもても大事です。ここで話をちょっと変えますが、インディーゲームを売ろうとする人がSteamというプラットフォームをどう捉えるべきかというのをお伝えしたいと思います。
Your target audience doesn’t existという記事がありまして、すさまじく面白いのですが、

  • トーチライト2を持っている人というのは、ゲームを100本くらい持っている。一方Dota2持ってる人は、7本くらい。
  • 1%のユーザーが、Steamで売れたゲームの本数の33%を占めている。
  • 20%のユーザーが、Steamで売れたゲームの本数の88%を占めている。

と書かれています。このデータの真偽のほどは(わりと真実に近いと思いつつも)さておきですね、これは非常に大事なポイントです。
要するに、Steamのユーザーの大部分は、Dota 2、Counter Strike、あるいはPUBGを遊びに来た人です。ほとんどのSteamユーザーはインディーゲームに興味はありません。……くらいの認識でちょうどいいと思います。(あくまでも、極端な話ね)
コミケって20万人来るんでしょ、その1%が買ってくれれば2000部、低く見積もっても1000、まあどう考えても500は行くだろう……。って考えるのと同じようなものです。
世の中というのはとても冷たくて、もうほとんどの人はあなたがつくったゲーム(もちろん、私が売るゲームにも)に基本的に興味はないのです。どれだけ頑張ってつくろうが、他人であれば、あっそう、てなもんです。あなたが思い描いている売上本数の桁を、ひとつ(あるいはふたつ)減らすくらいが案外現実的かもしれませんよ。
まあ、そんなこんなで、中国のアカウントが1億人増えたとて、あなたのゲームに関係あるのは、何人なのかしら、というのを冷静に見極めるのは大事かなと思います。

最後に

インディーゲームをつくっている皆さんがもしもあのツイートやこの記事を見て、中国ユーザー多い!ヤバい!と思っておられるのであれば、それはそれでいいのですが、それより、ゲーム業界における常識なんて、あっという間に変わっちゃうよ、ということを知っておいてもらえると良いと思います。
そもそも、中国は売切型のゲームは絶対に流行らなくって、F2Pしかやらない、とか聞いたことないですか?(私の周りだけ?)それはそれはもう頑なに信じられてきました。それが、そうでもなくなった。ここ数年であっという間にひっくり返ってきました。
あとは、PS4が出るときはこれが最後のコンソール機で、もう今後はPCしかなくなるとかも言われました。欧米ではビジュアルノベルは絶対売れないと言われたこともありましたね。PLAYISM立ち上げた時、彼らがどんだけ頑張っても、日本からインディーゲームが家庭用ゲーム機に出ることは絶対にないだろうと言われたこともありました。……まあ、謎の常識っていろいろありますね。
その瞬間はそうだとしても、次の瞬間には変わってしまう。なかなか時代を読むのは難しい。というか不可能に近いですね。。。来年Steamインド人だらけかも。っていうか、Steamなくなってるかも。皆コンソールに戻るかも。何が起こるやら。
ということで、インディークリエイターの方々にはぜひですね、あんまり今の現状に縛られず、状況に応じて臨機応変にいろいろ対応できるようにされておくことをオススメしたいと思います。
誰だったか、「インディーの一番強いところは、自分の好きな時にプロジェクトを捨てられることなんですよ」と仰っていましたが、これはけだし名言……。これが結構大手にはできない、インディーの数少ない武器なんですよね。
何やかんや言うてそんなことかい、と思われたでしょうが、はい、まあそうなんです。インディーゲームつくる人はマーケティングなんてあんま考えなくていいんです、面白ければ大丈夫です。ゲームを心から愛するユーザーに受け入れられさえすれば、大丈夫です。もしもあなたが作り手ならば、データに一喜一憂せずほんのちょっとでもゲームが面白くなるように情熱を注がれるとよろしいでしょう。
ということで無駄な時間を頂戴し、失礼しました。素敵なゲームをつくってください。
(プロデューサー陣はもちろんこういうデータを見倒すことをオススメします)

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