
2016.11.13
妙に大層なタイトルをつけましたが、個人的な体験をベースにしているので、実際の歴史を紐解くともっとあると思います。その点、悪しからずご了承ください。また、これを書いている人は、すべてのヒントが事前に提示され、それらを論理的に検証することでトリックが明確にわかる、いわゆる「新本格」派のミステリーが好きな人ですので、その点もご認識の上、お願いします。
ということで、『Her Story』がいかに素晴らしいかを過去の作品に触れながらまとめてみました。

昔々、『ポートピア連続殺人事件』というゲームがありまして、これはかのドラゴンクエストでおなじみの堀井雄二さんがつくられたアドベンチャー推理ゲームです。もともとはコマンドを直接打ち込むことで捜査するものだったそうです。『なぐる こみや』みたいな感じだったそうです。私はファミコン時代のものしかプレイしていませんので、あんまりその辺知らないのですが、ともかく後に『ポートピア連続殺人事件』は、コマンド選択型の推理アドベンチャーゲームとなりました。
たぶん、これが推理ゲームのはしりなんではないかと思います。(冒頭お伝えした通り、違うかもしれないけど)当初の推理ゲームというのは、コマンド選択型だったわけですね。このコマンド選択型、弱点がありまして、結局全選択肢さえ試せれば真相わかっちゃうのですね。結局推理しなくてもクリアできちゃうということで、楽しいんだけど若干のモヤモヤ感を抱えておりました。
で、それから時を経て革命的な推理ゲームが現れました。
それが、チュンソフトさんのサウンドノベルシリーズ第二作目『かまいたちの夜』でした。説明不要な気もしますが、このゲームは雪山のペンションで起こる密室殺人事件を取り扱ったものです。我孫子武丸先生(氏の『殺戮に至る病』はものすごい名作なので、グロ耐性あればぜひ読んでみよう)のテキスト、そしてシルエットで描かれた独特な人物絵と実写写真を組み合わせたグラフィック、そしてそれを盛り上げる音楽で構成された、「サウンドノベル」としてこの世に登場しました。ゲームブック的な形で選択肢を選ぶことで結末がどんどん変化していくという、ものすごい画期的なゲームでした。
当時、竜雷太さんがCMに出ていて(TVゲームのCMが昔は割と流れていたなあ)、「あなたのせいで、死体が増える」という名キャッチコピーがつけられていました。このコピーに違わぬこと、油断してると登場人物がどんどん死にます。終盤一気に登場人物が殺されていく「サバイバルゲーム」突入後の恐怖はすさまじく、死体だらけの真夜中のペンションに鳴り響くチャイムがほんとに怖かった。
今思うと、これもコマンド総当たりの変化球ではあるのですが、微妙に前後の選択も関連していたりと、単純な総当たりでは謎が解けなくなりました。考えて選ばないと、真相にたどり着くことはできなかったのです。その点が画期的だったのですね。これは推理できる!求めていたのはこれだ!と飛びついて買いまして、夢中でプレイしました。何より、犯人の名前を入力できるシーンでは身震いするほど感動しました。そこだけは選択肢じゃないんですね。
ただ、うれしいやら悲しいやら、『かまいたちの夜』が出た時点で、それが『かまいたちの夜』型ゲームの最高峰になってしまいました。最初にして頂点だったのですね。似たゲームがやりたくて、『夜光虫』とか『月面のアヌビス』とか『ざくろの味』とか、ついに『かまいたちの夜』の二次創作ぽい『1999Christmas Eve』にまで手を出したのですが、『かまいたちの夜』を超えるゲームは出てきませんでした。
出てきそうな気がかれこれ20年ほどしてるのですが、未だに出てこないのは事実で、推理ゲームはわりとここが頂点で止まっているような気さえします。
まあ、いずれにせよ、選択型なので、自分の思考の方向性がシステムに縛られる、ということは言えるわけですね。
次に現れたのは、『逆転裁判』ですね。矛盾を暴き続けることでとんでもない真相へとたどり着くという、システムとして全く新しい推理ゲームで、これはハマりました。推理ゲームの一つの可能性を示し、今や巨大IPとなりました。
ただ、トリックを解くというか、逆転裁判というだけあり、目の前の急場を猛烈にしのぎ続けるのが主ですので、純粋な意味での推理ゲームとはちょっと違いますかね。都度都度論理パズルを解いていく感じで、事件全体を推理するというものとはちょっと違います。まあ、仕方ないんですけどね。
また、エンターテイメント性あふれた仕掛けに満ちたゲームですので、現実世界からは割とぶっとんだ設定が多く、純粋な論理の戦いから逸脱する部分もあり、推理ゲームとは言いにくい部分も無きにしも非ずです。(みぬく、とかね)いや、ゲームとしては、超楽しいんですけどね。逆転裁判4の第一話は好き。
もうひとつ、『ひぐらしのなく頃に』が現れました。これはすごかった。同人ゲームがちょっとした社会現象になりました。当時、新聞に記事が出てて、私はそれで本作を知りました。
本作はまったく選択肢のない推理ゲームだったのですね。選択肢がなくなったことで、こちらの推理の幅は無限です。『かまいたちの夜』が抱えた問題を強引に解消し、非常に斬新に映りました。
本作は、「正解率1%」というキャッチコピーとともに、全国の探偵たちの心を躍らせました。まあ、トリック自体は推理ゲームとしては、それズルくね?という類のものではありましたが、新しかったです。
まあ、このパターンの抱える問題としては、単純にゲーム性ですよね。
で、現時点で割といろんな事情を解消したであろう推理ゲームは、『トリックロジック』でした。小説を読んで、キーワードを拾い、推理の正解を導き出すというものでした。考えてみるとメモ取りながら推理小説読んでる行為をゲーム化しているという感じではありますが、能動的に推理し、真相に迫るという体験ができ、これは限りなく私がプレイしたかったゲームに近かったのですね。
ただ、真相がもうわかっているのに、うまくキーワードが拾えないという謎のストレスに陥り、何度か投げかけましたが、とても楽しい体験でした。特に『切断された五つの首』というシナリオは、実に鮮やかなトリックで驚かされました。
『トリック&ロジック』は2010年の作品ですね。今からもう6年前です。それから、ずっと次の推理ゲームを探し続けておりました。
で、私の前に現れたのが、『Her Story』でした。前置き、長かった。
本作、もともと英語のゲームなのですが、ローカライズするのは結構いろいろ大変なところがありました。まず翻訳はするとして、ゲームを入れたとき、プレイヤーの方がちゃんとキーワードで拾っていくことで最後の真相がわかるようになるのか、ということ。
おそらく、いくらか英語で検索した時と日本語で検索した時と引っかかる映像が異なる場合があるでしょうが、ちゃんと推理して真相にたどり着けます。ホッとしています。よかった。
また、検索の仕方。原ゲームは英語でしか検索できませんでしたが、日本語で検索できるようになりました。ここがローカライズにおける最大のネックでしたが、実現していただけました。
『Her Story』は、素晴らしく、そして新しいエンターテイメント体験です。日本語版完成まで長らくお待たせしましたが、きっとお楽しみいただけるかと思います。どうぞ極上の推理体験を。配信開始は、11月18日予定です。
※Steamでも配信開始しました。