11月4日は日本ではデジゲー博 があり、『アクションゲームツクールMV 』と『Sprite Studio 』の合体ブースで『LA-MULANA 2』再現プロジェクト が展示されたりしていましたが、海を越えた中国上海におきましては、"WePlay "というインディーゲームイベントが開催されておりました。中国にも、インディーゲームイベントがあるんですね。
中国のゲーム市場というのは、いろんな噂があって、我々PLAYISMにとっても、とても未知なるものです。ちょっと前には突然Steamのユーザー比率が急激に伸びたりしたことでも話題になりましたね。 これまでほとんど中国でPRしてきたことはないけれど、突如として中国での売上が伸びてきて、中国語対応でもしてみるか……としてみたところものすごい売れたり(逆に全然売れなかったり)、いろいろ不思議が多い市場です。
とにもかくにも、あちらの国は人口が10億人越え。世界の20%くらいは中国人なわけですから、さすがにもう決して無視はできない市場なわけですね。(インドもそのうちそうなるのでしょうね……)
しかし、中国の人って、本当にPCでゲームをするのか? 中国でのゲーム機の売れ行きってどうなんだろう? スマホゲーは課金した人が勝つ、みたいなゲーム性(らしい?)が受け入られているとか? 中国ってそもそも……Steamが使えるのか?(LINEやFacebook、Twitter、Youtubeなどはシャットアウトされています。実際に確かめてきたから間違いなく使えない)などなど、あんまりにもよくわからない。
あまりにわからないので、今年の頭、中国市場の勉強かねてと台北ゲームショウに行ってきたのですが、そこで何人か中国本土の人に聞いたら、Steam使えるという人がいて、Steam使えないという人がいて、Steam部分的に使えるという人といて、まあ何もかもがそんな感じで、余計よくわからなくなりました。ということで、自分の目で見に行かないと、何もわからないままだということで、今回中国本土で出展してみた次第です。
Weplayに出展してわかったこと。
中国でも日本のゲームはとても人気。
PLAYISMでは『LA-MULANA 2』、『箱庭えくすぷろーらもあ』、『LiEat』なんかの中国簡体字版を展示してきました。『箱庭えくすぷろーらもあ』はまだ中国語対応版は初公開だったりしたのですが、「3つとももう買ってる」みたいな人も現れたりして、有り難かったです。
台湾に行った時も感じましたが、全体的にやはりアニメっぽいものが多く、日本のカルチャーは人気です。欧米のゲームよりも日本のゲームの方が人気かな……?という印象でした。(それでも、スパイダーマンは人気だった)
とある中国企業ブースにはクッパ姫の絵が描いてあったりもしました。
中国市場というのは、本当にすさまじい。
中国では確かにYoutubeも見れませんでしたし、LINEもFacebookもTwitterも見れませんでした。が、それと似たような国内サービスが存在しており、ゲーム実況文化が存在して、日本と同じように実況主さんが存在しています。
それで、ウチのブースにも実況主さんが何人か遊びに来てくれたのですが、フォロワー100万人のファンベースを持ってる実況主がごろごろ現れて、ウチのゲーム、めっちゃ人気やんと思ったんですが、現地の方に聞くと、100万人はわりと普通で有名な実況主っていうのは500万人からだそうです。500万人って。
また、スマホゲームなんかもダウンロード数が1,000万DLです、みたいな話がそこら中にあって、日本より人口が10倍なだけあって、何もかもが規模が10倍違う。たらればですけど、もし日本と同じクオリティのゲームが中国産として出たとしたならば……そのゲームは日本より10倍売れるでしょうね……。良いなーと思った。
ちなみに、Steamは見られましたが、Steamコミュニティは見られせませんでした。少なくとも、上海では。PCゲーム買うのは、やっぱりSteamが一番強いようです。
中国は、15年間のゲーム禁止の時代があった。
さて、出展中は私どもの出展ゲームをプレイする様子を拝見させていただいていたのですが、どうにもこうコントローラーの扱い方が上手くない。ゲーマーのイベントの割にゲーム下手やなと思いました。どうも、コントローラー文化になじみが薄い。
というのも、中国では2000年から15年間、海外の家庭用ゲーム機が一切禁止されていたそうで、その間は中国国内のゲームがPCやスマホで普及していたようで、若い世代にとってはキーボードやマウスでゲームする方が割と自然なのかなという感じでした。
中国でゲームをリリースするには政府承認が必要。
しかし、家庭用ゲーム機を禁止とかそんなこと決めてできるものなのかと日本人の我々は思ってしまいますが、中国というのはいろんな面で政府が登場します。
今も家庭用ゲーム機が解禁されたとは言え、ゲームをリリースするには、中国では政府に承認を取る必要があるそうです。勝手にゲームを販売できないのですね。流血表現がダメとか、あんまりお色気のコンテンツはダメとか、中国でゲームを出すのはとてもハードルが高いです。(中国国内のゲームと海外産のゲームでは基準が違うとかどうとか、いろいろややこしいみたいです)
ソニー・インタラクティブエンタテインメントの秋山賢成さんの講演を見るとその辺りに詳しくなれます。
https://www.famitsu.com/news/201709/04141032.html
話が脱線しますが、マンガとかドラマとかもそうなんですか?と聞いてみたところ、ドラマはそうです。漫画は中国にありません。あれは、台湾からやってくるんだ。と言われました。中国で出版されてるマンガって、ないんだ……。
今、政府承認は止まっている。
それで、2018年11月、政府承認というのは実はストップしています。つまり、今、この瞬間、中国国内では新作ゲームは出せない!なお、政府承認がストップした理由は、"中毒性が高い"とか、"目が悪くなるから"だそうです。
では、いったい、いつから新しいゲームを出せるようになるのか?これが、まったく不明瞭です。政府の人しかわかりません、というか、決まっているのかもわかりません。政府の人もわからないのかもしれない。噂だけが流れていました。皆言うことバラバラの噂。スゴイ。
そう言えば、とある大きな企業がWePlayに出展していなかったので、どうして出展しなかったの?と聞くと、「そりゃあ、新作がないからね」と言われました。なるほど、それもそうだ。
中国のゲーム会社はダメージを受けないのか?
そんなことで中国のゲーム会社というのはビジネスが成り立つものなのか?と思いますが、やっぱりなかなか難しいんですね。
例えば、中国にはテンセントという巨大企業があるんですが、まあここはゲームだけではないんですけれども、10月に株価が38%減し、25兆円がすっとぶことが起こりました。これは上述の政府のゲーム規制も関係しているとされています。
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/181011/mcb1810110601018-n1.htm
こんなの、いつ暴動起きてもおかしくないですよね?という問いには、現地の方はあいまいな苦笑いを浮かべられておられましたが、ダメージを受けるかどうかでいうと、受けまくっています。ともかく、すごく困ってるみたい。
中国のインディーゲームシーン
さて、中国のゲーム業界ですが、例にもれず、大きなゲーム会社がパブリッシャーでお金を払って、開発会社にゲームをつくってもらう、というシステムになっています。ところが、今中国政府の承認が止まってしまったので、そこのデベロッパーたちの仕事もストップしているものが多くあるとか。ということで、こうなると、小規模の会社はバタバタ倒れちゃうので、インディー化せざるを得ない。自分たちで金を稼がねばならん、ということでゲームを作ってグローバルに売っていくことを目指し始めています。
という事情があるそうで、仕事の合間に、とか趣味的クリエイターよりもお仕事インディーが多いそうです。中国のインディーゲームクリエイターの多くは、下請けのデベロッパーなのですね。なので、すごいクオリティの高いゲームがたくさんありました。
Weplay 出展作品・受賞作品等々 ⇒ http://www.weplaymore.com/4
大賞に選出された、『ANNIE』ってゲームは、本当にすごかった。夢のようなすばらしさだった。
中国インディークリエイターの抱える苦悩と苦労
そのようなわけで、中国のインディーゲームクリエイターは結構ビジネスライクで、生々しい言い方をしますと、死ぬか生きるかというか、結構切羽詰まった状況にあるようです。
その状況は、『独行』というドキュメンタリーにまとまっております。『Branching Paths』 の中国版ですね。残念ながら日本語字幕はないのですけども、IGN JAPANさんで記事にされており、その苦労苦悩をうかがい知ることができますので、ぜひご一読ください。
https://jp.ign.com/china-weekly/28872/feature/24
最後に宣伝!
その『独行』にも登場しました、王妙一さんが開発された『WILL: 素晴らしき世界 』はいろいろご縁ありまして、日本の販売を私どもPLAYISMで行っており、11月15日よりNintendo Switch/PlayStation 4にて配信開始となりました。
こちらはSwitch版PV。
VIDEO
本作は、家庭用ゲーム機の失われし15年というのをものともせず、『街』や『428』といったサウンドノベルタイトルをはじめとし、日本のカルチャーに大きな影響を受けたタイトルです。
Automatonでの対談記事をご参照あれ。
中国インディーゲームシーンの文脈というか、このゲームが日本語で遊べることの不思議さというか面白さみたいなものをちょっと感じながら、遊んでいただくともっと本作楽しめるかもしれません。ぜひお楽しみください。