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2014.07.23

GONE HOME | このゲームでしか味わえない独自のストーリー表現

Gone Home』は、わずか3名のインディー開発チーム”The Fullbright Company”によって生み出された、2013年を代表するインディーゲームのひとつです。『Gone Home』…まあ、『帰宅』みたいなもんでしょうか。主人公はケイティという女性で、一年くらい海外にいて久々にお家に帰ってきたら、誰もいなくなっていて、なぜいなくなったのかをFPS視点でアドベンチャーしていくゲームです。洋館を探っていく感覚はバイオハザードぽくて、ちょっとホラー感もあります。
やっとプレイできまして、なかなか素晴らしかったのでご紹介いたします。
 
Gone Home

輝かしすぎる受賞歴

2013年は『Papers, Please』が結構いっぱい賞を取ったのですが、『Gone Home』も負けていません。

Metascoreには、55のレビューが集まり、86を記録しています。何故『Gone Home』はここまで評価されたのでしょうか。

物語の導入

1995年6月7日午前1時15分。
海外で一年を過ごし、久々の帰宅。あなたは家族がきっと出迎えてくれる、そう思ったはずなのに、家はもぬけの殻です。何かがおかしい。皆はどこへ?ここでいったい何が?
『Gone Home』は、インタラクティブな探索シミュレーターです。そこに住む人々の物語を見つけ出すために、一見普通に見える家の中をつぶさに調べましょう。引き出しや扉を開きましょう。ものを拾い上げ、調べ、手掛かりを見つけましょう。家族が残したものを調査することで、家族の間で何が起こったのか、見い出すのです。
さあ、家に帰りましょう。

ゲームらしいことは何も起こらない

というわけでですね、あなたは主人公となって、お家を探索をすることになるのですが、ゲームとしては、正直とても地味です。


鍵を探したり、メモを読んだり、たまに金庫を開けたりというのがメインプレイになります。時折鳴り響く雷が超怖いのですが、ゾンビが出てくるわけでも殺人鬼が出てくるわけでもありません。本作において、ゲームらしいことはほぼ起こりません。敵が出て来ないどころか、味方もいません。というか、誰もいません。パズルもないし、アクションもありません。この仕掛けの引き絞り具合は、なかなか圧巻です。いくらなんでも何か起こるだろうと思ったのに。要は、このゲームの肝はストーリーおよびその表現方法にあるわけです。

ゲームという仕組みをつかった追憶体験

お家の中をさまよい歩き、メモやら何やらに触れていくうちに、家族のことを少しずつ知ることができます。ここのお父さんは売れない作家なんだなとか、お母さんは不倫してんのかなとか、妹がいてこの子は……とか。また、90年代のアメリカのお家を舞台にしており、そのリアリティがなかなかすさまじいようで、スト2のカセットぽいものが出てきたり、90年代に活躍したバンドの話が出てきたりと、そのころ青春を送った方に刺さる作品となっています。
Dear Esther』と似てる感じもありますがあちらがゲームにおける可能性を押し広げた実験作品ならば、こちらはゲームではないアート作品です。物語の新たな表現手法としてゲームを用いています。メモを読み込む中で、いなくなった間の出来事を知り、それにまつわる家族の感情を知り、プレイヤーは自発的に物語を紡ぎ出していく。本作は、言わばゲームという仕組みをもって表現されたインタラクティブな短編映画であり、短編小説であり、そして追憶体験なのです。ここが『Gone Home』の肝かと思います。これはこのゲームでしか味わえないエンターテイメント体験でしょう。
 
(ただ、リアリティがあるが故に、家の隠し扉の多さや家中に散らばる暗号など、わずかに残るゲーム性に違和感を覚えることがあります。どうしても、この家、忍者屋敷やんと思ってしまう。)

どうにもならない家族間の溝

本作は、家族をテーマにした作品です。理解し難い世代間の溝とか、親子の溝とか、家族間のどうしようもない問題が描かれており、おおよそこれまでのゲームがテーマにし得なかったものを主題に持ってきています。こうしたゲーム体験は他の作品では得難いものであり、『Gone Home』を唯一無二の存在にしているのでしょう。
 
でも、アメリカ人でないと多分共感しきれない。えーと若干ネタばれになりますが、本作の物語はライオット・ガールという論を主軸に展開しています。この文化を肌で感じているかいないかが、わりと評価の分かれ目になると思います。我々日本人にとっては、アメリカ文化の上に成り立つ物語であるが故、100%本作を楽しみ抜けるのか、というとやや疑問は残ります。逆にわかる人には、ぜひオススメ。いや、インディーゲームは、もうここまで行っちゃってるんだなというのを知る意味で、わかんなくてもオススメ。

日本語版について

さて、本作はもちろん海外の作品なので、英語ベースのゲームなのですが、ファンローカライズデータがそのまま公式サイトで配布されております。日本語のファンローカライズを担当されたのは、武藤陽生氏と伊東龍氏という二人のプロの翻訳家。さすがにクオリティとしては文句なく、気になる点なく最後までプレイできるでしょう。日本語版でプレイする際は、心の中でお二人にありがとうございますと言ってからプレイしましょう。日本語化する方法は、こちらから

値段設定について

最後にオマケ的な話ですが、『Gone Home』の値段設定について。19.99ドルで、インディーとしてはわりとお高めの値段です。プレイ時間は2時間あまり。セールになったら、買うよ、という人が多いのです。これに対し、「どうせセールでしか売れないから、高めにしといた」のだそうです。まあ、これは確かにそうで、日本国内は意外とそうでもないと思うのですが、PCゲームはセールで売れるものでして、特にSTEAMというプラットフォームはセールで真価を発揮するサイトです。
まあ、あんまりそれ言っちゃうと誰も定価で買わなくなるよなぁ…とか思いつつ、そうしたインディーの価格設定においてもちょっとした問題を投げかけた作品なのです。

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